7月に発達障害児の親御さんと懇談するタウンミーティングを開催しました。その会の様子と、感じたことをお伝えしたいと思います。
増加している発達障害とは
発達障害とは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム/自閉スペクトラム障害)、LD(学習障害)、HSP(ハイ・センシティブ・パーソン)等に分類されます。発達障害がリンクしていたり、グレーゾーンであったりその特性は一人ひとり様々です。
2012年12月公表された文部科学省の調査結果から、通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に学習や行動に困難のある発達障害の可能性があることが分かりました。2012年の前回調査から2.3ポイント増え、35人学級であれば3人ほどの割合となります。増加の背景には、発達障害への認知の広がりがあるとみられています。増加する発達障害児の個性に応じた支援策の充実が課題となっています。
タウンミーティングを開催した理由
タウンミーティングとは、私達議員と区民のみなさんが直接対話することによって、区政に対する意見・提案を伺うための座談会のようなものです。
今回、発達障害児の親御さんとのタウンミーティングを開催しようと思った理由は、我が子の発達障害についてブログに掲載したところ多くの反響があり、実際に見ず知らずの方からや紹介でご相談をお受けしたことがきっかけとなりました。ご相談を伺う中で、娘の対応に奮闘していた当時を思い出しました。今現在、直面しているお母さんたちの生の声を伺い、区政に届けなくてはと思わせていただいたからです。
私は発達障害について専門的な知識を有しているわけではなく、一発達障害児の子育て経験者というだけです。様々な特性を持つお子さんのお話を受け止められるだろうかと、正直開催にはとてもとても勇気がいりました。しかし、私の不安をかき消してくれる不思議な力を持つ長女がいてくれれば心強いと思い、また、学生時代の当事者の声を伺って貰うことで子どもの生き憎さを少しでも理解できる機会になればとの思いから、当日はADHDとASDを併せ持つグレーゾーンの長女に参加してもらいました。
参加いただいた5名のお母さんの様子
当日は、参加してくださった5名の親御さんからお子さんの状況を伺いました。
①2年生にして政治に興味があり、「自分のように苦しんでいる人のための学校を作りたい」というAさん。手先が器用でミシンで何でも作ってしまう。運動も勉強も成績優秀。しかし、教科書の苦手なフォントやドリルの中の点線を見ると、吐き気がしてしまう。学校では精一杯頑張っているため、家に帰ると食事も入浴もできないくらいに疲れ果て、暴力的になり、困っているお母さん。
②2歳半でASDとの診断を受け療育を受けている年中のBさん。読み書きはできるが、自ら文字を読むのが苦手。面談でコミュニケーションの取り方が気になると言われている。しかし、特別支援教室への優先度は低いと言われ、就学してから通常学級だけで過ごせるのか、クールダウンする場所が必要と不安を抱えているお母さん。
③算数が苦手。ウィスク検査(知能を測定する検査で客観的な数値で子どもの得意・不得意などの発達のバランスを知るための検査)で、認知や短期記憶が低い結果が出たばかり。学校でいじめにあい、学校に行きたくないというCさん。娘のためには、このまま通常学級で良いのか悩んでいるお母さん。
④HSPで先生や友達の言葉などに心労を抱えていたDさん。「死にたかった」という娘がどれほどの思いを抱えて過ごしていたのだろうと涙ぐむお母さん。不登校傾向にあるが別室登校できていた。しかし、担任の先生から別室登校の児童に対応できる教員がいないこともあると言われ困惑を抱えている。
⑤今回対象の年齢を超えているが、発達特性があると感じている高校生のお子さんの生活態度に悩むお母さん。自分の父親が厳しかったので、そういう子育てはしたくないと思いながら連鎖しているように思うと話される。保育士であり、預かるお子さんには、発達障害やグレーゾーンの子がおり対応できているのに、我が子には中々そうできない。発達障害児の保護者が参加したかったが、所用で参加が叶わないため代わりに参加くださった。
タウンミーティング最中の様子
はじめに、私の自己紹介とこの会の主旨として、ここで何か解決策を見つけるということではなく、様々な特性を持つ子どもの子育てに悩む親同士、共感しながら励ましの場となること、また私が皆さまの声を伺い区政に活かせる場となることを目途として開催したことをお伝えしました。そしてアドバイザーとしてお越しいただいた、障害をお持ちの10歳くらいまでのお子さんを対象に早期教育を行うお教室「エコール Avance」 代表の伊藤映子先生の挨拶、遅れて登場した長女の自己紹介を終え無事にスタートしました。
そのあとは、一人ひとり自己紹介とお子さんの状況をお話しいただきました。時間を大幅に超えるくらい様々な思いを語ってくださいました。初めて会った面々なのですが、そう思えないくらい共感力の高さを感じました。お話を伺いながら、皆さん悩み苦しいと感じているけれど、それはお子さんを誰よりも愛しているからであり、今後の子どもの行く末を按ずるが故であると感じていました。
私は長女の発達障害について全て理解することはできないけれど、他人には分からないであろう長女の良さを知っている。きっと、参加されたお母さんたちも同じように感じているはず。凸凹の激しい発達障害。強調されがちな凹の部分ではなくて、成績や数値などでは表せない凸の部分を発表し合ってこの会を終えようと時計を見ながら考えていました。
最後に、私しか知らない子どもの良いところを発表して終わりたいと思います。と言って私から「娘の良いところは、弱っている人に優しいところです。家族が病気や怪我等で苦しんでいると、俄然力を発揮して介抱してくれます。」と発表し順番に話していただきました。全員が涙しながら子どもの良いところを話してくれて笑顔で終了しました。終了してからも娘は囲まれて色々質問されていました。
タウンミーティングで感じたこと
担任以外の相談窓口が必要!
個別サポートが必要な児童・生徒が増加している中、一人ひとりの特性に対応する相談窓口が担任の先生だけでは限界があると感じました。Aさんのクラスは1/3の児童に何らかの配慮が必要という学級なので、合理的配慮に欠けると感じているということです。担任の先生1人で対応できるはずがありません。また、これまで就学前のお子さんの発達障害疑いに対してどこに相談したら良いのか分からないという声もありました。この点を明らかにして、早期に相談・対応できるよう相談窓口を周知する必要があると感じました。
人的配置の充実が何よりも先決!
お母さんのお話を伺いながら、一人ひとりには限りない可能性が秘められていて、これからが楽しみだなあと思えてなりませんでした。その可能性を潰すことなく開花できるよう教育・行政の責任と使命は大きいと感じます。スクールカウンセラーが不足しており、相談待機者がいるという声も寄せられています。教員の負担を軽減し、個別支援を充実するには、何よりも人的配置の充実が先決であること、給食費無償化の予算により、人的配置の予算が阻害されることがないよう改めて区に求めようと思いました。
誰でも利用できるクールダウンする場所が必要!
長女は小学生6年間単学級でした。35人のうち6人くらい発達特性を持つ児童がいました。児童同士のトラブルも多く、授業中ウロウロ教室を歩く児童もいました。担任の先生のご苦労は痛いくらい感じていました。他の児童生徒に影響が及ばないよう、トラブルがあった時など、クールダウンできる場所があることは重要です。以前視察した宇都宮市では、全小中学校にかがやきルームという特別支援教室があり、専任の教師が配置されていました。このように人と場所を充実するには、予算を確保しなくてはなりません。こうした教室を杉並区でも実現できるよう取組もうと決意しました。
かがやきルーム(特別支援教室)とは=通常の学級に在籍し、発達障害などの傾向により、学習や生活上に困難さを抱え特別な支援を必要とする子どもたちが,必要な時間のみ個別指導や小集団指導を受けられる教室です。(緊急対応可)
今回のタウンミーティングの概要はこちらです。