【一般質問】医療的ケア児・発達障害児・不登校児の支援

2023年9月に行われた杉並区議会での一般質問と区からの答弁を共有します。

目次

医療的ケア児・重症心身障害児の支援について

質問①

今後、医療的ケア児を学童保育で受け入れるにあたり課題は何か?また、 医療的ケア児が通う学童保育の様子、当事者である児童、親御さん、まわりの児童や職員の声、これを受けた区の認識と今後の計画は?

答弁①

区の学童クラブでは、試行的な取組として、令和4年度から医療的ケア児の受入れを開始し、今年度は2名の受入れを行っております。当該の児童からは「学童クラブに行くことが楽しい」といった声を、また、保護者からは「学童クラブで地域の子どもと一緒に遊び交流するなど、本人の成長に驚いています」 といった嬉しい声を頂戴しているほか、周りの児童も医療的ケアや障害を個性の一つと捉え、進んで交流をする様子が見られている旨報告を受けております。

また、職員からは「受け入れ開始前に行われた研修や指導医からの助言等で不安が解消され、スムーズに受け入れることができた」といった声が聞かれたところです。医療的ケア児の状況をより的確に把握するため関係機関と一層の連携を図る必要があるなど、 今後に向けた課題もございますが、区では、この間の受入れ状況を踏まえ、令和6年度以降、学童クラブでの医療的ケア児の受入れを拡充する方向で検討を進めております。

質問②

放課後等デイサービスが計画通り進まない状況について、区の認識を伺う。本事業の助成額が近隣区と比較しどのような状態にある?今後、助成額を拡充する必要があると考えるが区の見解は?

答弁②

放課後等デイサービスが計画通りに進まない状況につい てですが、議員ご指摘の通り、区内に放課後等デイサービスに適した物件が少ないことに加え、 家賃が高いため採算が取れないことが、計画通りに進まない要因であると認識しております。また、本事業の助成額の近隣区との比較についてのお尋ねですが、区では事業所の開設を促進するため、 開設時にかかる敷金や改修費の助成、看護師等の加配のための人件費を補助しておりますが、近隣区では、建物の賃借料や運営経費の一部を毎月補助しているところがございます。
区としましても、障害児の療育支援の充実を図るため、事業所の安定した運営への支援は重要であると考えておりますので、他区の状況も踏まえ、補助の内容や補助額等の見直しを図り、放課後等デイサービス事業所の開設が進むよう支援してまいります。

質問③

施設整備を計画するにあたり、まずは実態調査を行い、その必要数から計画を立てるものと考えるが、これまでどのような実態調査を行ってきたのか。 その調査結果をどのように分析してきた?

昨年度、区で「医療的ケア児・者等実態調査」を行ったと伺った。今後この調査結果をどのように活用していくのか。 今後の計画は?

答弁③

区では、放課後等デイサービスの開設を計画するにあたり、毎年、就学前の医療的ケア児や重症心身障害児の人数と保護者の就労状況等の実態を把握するとともに、 各事業所の利用者や待機者の状況等を確認したうえで、必要数を算出しています。
次に、医療的ケア児の実態調査のお尋ねですが、この調査は、医療的ケア児を中心とした障害児者の保護者160人からご回答いただいたもので、医療的ケア児の通園、通所の状況や日々の生活で困っていること、今後必要となる支援やサービス等について、実態やニーズを調査したものです。「日中の預かり支援」 や 「宿泊の預かり支援」 については、半数を超える保護者の方から、充実してほしいとのご回答をいただいております。
区としましては、「この実態調査の結果を踏まえ、放課後等デイサービスをはじめとする日中の預かり支援の充実やショートステイ先の確保等について、計画的に開設が進められるよう取り組んでまいりたいと考えております。

質問④

障害児福祉は子ども本人の権利であり、親の所得に関わりなく一律の負担額で社会福祉支援が受けられるよう軽減策を検討していただきたい。利用者負担上限額について課題があると考えるが区の認識は?

答弁④

利用者負担額に関するお尋ねですが、 放課後等デイサービスをはじめ、 障害児の通所事業につきましては、指摘のとおり国が定める利用者負担額の上限額が定められており、保護者の所得に応じて3段階の区分に分かれております。これは全国一律の制度でございますので、区単独での負担額の軽減は難しいものと考えております。
一方で、医療的ケア児や重症心身障害児は、医療機器や補装具等を利用している方も多く、 成長に応じて買い替え等が必要なことから保護者負担が大きいことは認識しております。
そのため、区では平成19年度から、乳幼児及び義務教育就学児を対象に、 補装具に係る利用者負担の助成を保護者の所得制限なく実施しているところです。

質問⑤

保育待機児童解消宣言の際には、あらゆる区有地を活用し場を確保してきた当区である。医療的ケア児、重症心身障害児の居場所の確保についても同様に区有施設の活用を視野に入れて、喫緊の課題である放課後等デイサービスの拡充とともに学童保育の受入れを進め、今後は中高生の居場所、 18歳以上の居場所の検討を進めていただきたい。区の見解はいかがか?

答弁⑤

医療的ケア児や重症心身障害児の居場所の確保については、障害者団体はじめ特別支援学校のPTAの方からも多くのご要望をいただいており、 特に、 中学生以降の放課後の居場所や学校卒業後の通所先の確保については、 区としても喫緊の課題であると認識しております。
これらの居場所等の整備につきましては、複数の所管にまたがる課題であるため、 現在、関係部署による検討チームをつくり検討を進めているところですが、 今後先行自治体の視察を予定しており、こうした取組例も参考にいたします。
これからも、 障害福祉、 子ども家庭、 教育等の関係部署が連携し、医療的ケア児や重症心身障害児の居場所の確保を含め切れ目ない支援の充実に努めてまいります。

発達障害児の支援について

質問⑥

親自身が子の特性を理解できず、苦しむケースも多いのではないか。 その結果、 親子の関係が悪化し、 二次障害を引き起こすケースも少なくないと考える。 発達障害について学ぶ場、親同士が話し合える場、ペアレントトレーニングなどピアサポートを推進していただきたいと考えるが区のご所見は?

答弁⑥

発達障害児の相談支援にあたっては、お子さんの発達に心配や不安を感じている保護者の方の悩みや相談をしっかりと受け止め、お子さんの特性や課題に合わせた支援を行うことが重要となります。こうしたことから、乳幼児が通うこども発達センター等では、親子通園日やグループ指導の日を通し、親が発達障害について学んだり、親同士の交流ができる場を設けております。

一方で、学齢期に入りますとそのような場はないのが現状であり、区としても課題であると認識しております。そのため、今年度より、小学4年生から中学3年生までの保護者の方を対象に、発達障害の子への理解と接し方を学ぶ講座をシリーズで開催すべく準備を進めております。学齢期になっても親同士が交流できる場等については、この講座の開催状況を踏まえて検討すべきものと考えております。

質問⑦

区内にはさまざまな状況にある子どもたちが数多くおり、あらゆる立場の子どもたち全員の権利が守られる社会こそが、目指すべき未来の姿と考える。 困難を抱え、支援を求めているさまざまな立場の子どもたちの権利が守られる社会の構築に向けた区の決意は?

区長答弁⑦

ご質問をお聞きし、私も区内にはさまざまな立場の子どもたちが生活していることを改めて勉強させていただきました。
区長に就任して以降、私のところにも重度の障害を抱え支援が必要なお子様とその保護者の方がお越しになり、要望等を直接お聞きする機会がありました。 その際感じたことは、さまざまな立場の子どもの権利を守るためには何が必要かについては、当事者の方と一緒に考え、地域全体で取り組んでいくことがとても大切だということです。こうした考えのもと、私は、すべての子どもたちの権利が守られるべき対象であるということを前提にしながら、大人も含めたすべての人が 「子どもの権利」を理解し、子どもを誰一人取り残さず、その健やかな成長を後押しできるような地域社会を目指すための取組を進めていくこととしたところです。
困難を抱え、支援を必要とする子どもたちの権利を守るための具体的な取組内容につきましては、今後、子どもの権利擁護に関する審議会において議論されるものと認識しておりますが、たとえ子どもの権利を守る条例が制定されたとしても、それ自体がゴールではなく、その後、実効性のある取組をどのように主体的に進めていくのかが大変重要であると考えています。基本構想に掲げた「すべての子どもが、自分らしく生きていくことができるまち」の実現に向けた歩みを、着実にそして積極的に進めてまいります。

不登校支援について

質問⑧

本区の不登校児童生徒の人数と割合、講じてきた対策は?専門的な支援を受けられている割合は?不登校児童生徒の居場所として民間との連携について区の見解は?

答弁⑧

不登校児童生徒の支援は、社会全体で取り組む課題であり、行政や民間の枠を越えた支援体制の構築は重要だと認識しております。教育委員会はこれまでも、増加する不登校児童生徒への支援として、学校の教育相談体制の整備、 少人数グループでの心理相談を行う場や回数の拡充、さざんかステップアップ教室の受入人数の増加等に取り組んでまいりました。

本区の令和4年度の不登校児童生徒数は897人、その内、専門的な支援を受けている割合は約66%(専門的な支援を受けてない割合は34%)、全児童生徒数に占める割合は3.13%でございます。今後は、不登校の背景にある多様な要因を踏まえ、庁内横断的に子どもたちの支援体制を検討し、 民間等との連携を進めてまいります。

質問⑨

空き教室等を利用し別室登校している学校数と経緯、効果は?本区で実施されている校内居場所事業のスキーム及び都補助金での対応や課題は?

今後、国の補助金を活用した「校内教育支援センター」の全小中学校で実施してほしいが区の見解は?「校内教育支援センター」の設置に向けて、指導員の確保に取組んでほしいがいかがか?

答弁⑨

本区においては、各学校が人材や施設等の実態に応じて、保健室や空き教室を利用し、 不登校状態の児童生徒への指導・支援を実施しております。 教育委員会はその立ち上げや運用の助言、見守りボランティアの費用を支援しており、 校内居場所で指導・支援を行っている区立学校は現在44校となりました。 校内に居場所をつくることの効果としては、 人とつながる機会の確保、 登校習慣の確立、 教室復帰などがあります。また、東京都教育委員会による補助金につきましては、区立学校9校がボランティア人材の報償費として活用しておりますが、支援方法の共通理解や人材の確保等が課題です。

今後は、小中学校全校が、国や都の補助金等を活用し、実態に応じて校内居場所を校内教育支援センターとして機能させることができるよう、現在の学校に配置している人的資源を整理し、不登校状態の児童生徒を校内で指導・支援できる人材の配置を検討してまいります。

下記のアーカイブ動画では、質問の背景などフルバージョンでご確認いただけます。

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