12月22日18時半、「性の多様性が尊重される地域社会を実現するための推進に関する条例」及び、「杉並区パートナーシップ制度(骨子案)」について第2回目の区民説明会が開催された。

4年半程前、当事者団体の方々が我が会派を訪ねて、杉並区でパートナーシップ制度を導入して欲しいと訴えられた。当時、2015年渋谷区が制度導入されたのを皮切りに世田谷区、中野区で導入されていたが、区民から直接声を伺ったのはその時が初めてだった。よくぞ声をあげてくれたと勇気に感謝した。先ずは理解促進からと議会での調整を図り、性的マイノリティへの理解促進を求める陳情採択に努めてきた。これまでの経緯、取組みは後述するが、条例制定は決して拙速ではない。この間、パートナーシップ制度導入に向けて取組んできた1議員として逸る気持ちで説明会場である区役所に向かった。すると、会場の入り口付近で元区議会議員が抗議活動を行っていた。その内容はここに記述することは避けたい、耳にするのも不快な酷い言葉であった。元来人前で性の話はしたくないと言いながら信じられない言葉であった。

抗議の趣旨は、杉並区が進めているこの条例には欠陥がある。自称女性を名乗るただの男が女湯に入れる条例だ。女の適を作るというのである。この条例のどこをどのように読んだらそうした解釈になるのか、私には全く理解できなかった。議会ではパートナーシップ制度導入を反対していた元区議である。人々の不安を煽り、疑念を持たせ、危険な条例とレッテルを貼り、制度導入を阻止することが狙いであることは一目瞭然であった。目的達成のためならば、手段を選ばない、トランスジェンダーの方の心を傷つける行為は許せないと思った。悲しい気持ちでその場を後にして会場にはいった。約30分区側から条例の説明がありその後質疑応答の時間となった。

まず初めに手をあげられたのは、トランスジェンダーの男性であった。前回の説明会でも、同様の抗議活動が行われており対応を求めていたが、トランスヘイトを区は何とかできないのでしょうか。との切実な声であった。区の敷地内で行われているのならば静止することが出来るがそうではなく、一方で表現の自由という考え方もあるというのである。警察とも連携を取り出動してもらったという。また、公衆浴場法という法律で7歳以上の混浴はできないため、そうした事態にはならないと考えていると説明するが、抗議活動に対して区もお手上げ状態という感じである。

その後の質疑応答では、説明会開催に対して区への感謝の声。子どもを取り巻く環境の保育園や学校での理解促進の取組みが必要である。事実婚を含めたことは評価するが記載が少ないと感じる。ジェンダー指数の低い日本においてこういた施策は重要である。など建設的な意見が多く穏やかに終了した。この日を迎えるまで長い歳月を要し、苦悩してきた立場から感慨深い気持ちで安堵した。

抗議活動を終了して説明会に来ると思っていた元区議は説明会に参加しなかった。何故元区議は説明会に参加して、条例制定に関して心配していること、不安に思っている女性がいること、疑念、欠陥があるとの主張、指摘をしなかったのだろう。そうした場は公然と提供されていたのに…

国の法律を条例が上回ることはない。生まれた時の身体が男性で、性自認は女性という性転換手術をしていない男性が、私は性自認は女性だから女湯に入れないのは差別だと言っても、それは許されていないのである。そうしたことを条例の付則に明記すれば良いではないか。

私自身がトランスジェンダーになったと想像してみた。身体は男性しかし性自認は女性の自分が、男性に襲われることを考え当た時、果たしてそのような思いを女性にさせたいと思うのだろうか?性自認は女性と偽った男性が女湯に侵入する行為は犯罪である。それとトランスジェンダーを混同するような抗議は人権侵害である。

銭湯などで、懸念されるような事態が発生すれば営業に影響を及ぼし兼ねない、経営者は逆に警戒心を持って業務にあたるのではないだろうか。ひいては女性を守る条例になるのではないか。そのような思いを抱きながら発言は控え見守った。

冷静な建設的な質疑応答は終了した。終了後、直ぐに部長と課長のもとに向かい、先ずは労いの言葉をかけ、抗議活動に対して誤った理解が拡がらないように、ホームページに掲載することはできないのか。トランスジェンダーの方々は、自ら声を上げることが出来ないのだから、区が守ってあげて欲しい。と訴えた。しかし、パブリックコメントに回答するという形で対処・対応しそれを掲載していく。と即時の対応とはならなかった。

帰宅しても私のもやもやは消えない。私が発信すれば非難中傷を浴びることは想像できた。しかし、黙っていることはできなかった。烏滸がましいがトランスジェンダーの方を守りたいと思った。それが返ってトランスジェンダーの方を苦しめてしまう結果になったのではないかと深く反省し、それ以上の発信を控えた。

人にはそれぞれ正義がある。自分の信じる道を進むことに異論はない。しかし、そのために人の心を利用し、苦しめること、誹謗中傷することは決してあってはならない。

私は人間が大好きだ。区議会議員として人々の笑顔をみることが最高の喜びである。私心をなくして身を捧げようと決めた人生。「抜苦与楽」苦しみを抜き去り楽しみ喜びを与えたい。それが私の政治信条であり生き方だ。

パートナーシップ制度は必要ないという方に利用を強要することはない。今までと何も変わらない。必要とされる方が静かに利用されるだけである。

抗議活動の元区議とは同期である。定例会が終了する毎に同期会を開催し親しく歓談した日が懐かしい。どうかあなたの正義が間違った方へ向かわないよに!この制度を必要とする人々の側にも立ってより良い制度へご尽力いただけたらと願う。